この記事では、現役弁理士がおすすめする弁理士試験用の参考書・テキストを紹介しています。
自分で使っていた参考書のほかにも、使っていなかった参考書についても大型書店で網羅的に調査しました。
学習開始から合格までのステップごとにまとめていますので、ご自身の学習段階に合う項目を参考にしてみてください。
弁理士試験のおすすめ参考書
基礎学習におすすめ
初心者の基礎学習におすすめなのが、TACのエレメンツシリーズ3冊です。
と言うよりも、市販されている(つまり弁理士試験講座とセット販売でない)参考書の中ではエレメンツ一択だと思います。
エレメンツを選ぶ理由は次の3つです。
① 分かりやすい
基礎学習では特に分かりやすさを重視した方がよいです。
エレメンツは、シンプルなレイアウトで図表を用いて分かりやすく解説しています。
トピックごとにチェック項目、問題が付いており、理解を確かめながら学習を続けることができます。
② 情報が信用できる
「出版物の情報が正しいのは当たり前だろ」と言われてしまいそうですが、そうとは限りません。
最近では、誰でも簡単に電子書籍が出版できてしまい、信ぴょう性が怪しい出版物が急増しています。
弁理士試験の電子書籍も出されていますが、避けた方が無難だと思います。
著者が信用できる人物か分かりませんし、個人が第三者の目を通さずに出版している場合、ミスに気付きにくいからです。
弁理士試験用のアプリも同じ理由からおすすめできません。
情報の真偽を判別できない入門の段階では、特にご注意ください。
一方、エレメンツの著者TACは資格試験予備校の老舗ですので、全面的に信用して問題ありません。
③ 法改正をフォローしている
法律には改正がつきもので、法改正前後で答えが正反対になる場合もあります。
エレメンツのように法改正を反映してこまめに改定されていなければなりません。
②で述べたような信用できない参考書は、法改正をフォローしていないことがほとんどです。
弁理士試験 エレメンツ (1) 特許法/実用新案法 基本テキスト 第11版 (早稲田経営出版)
弁理士試験 エレメンツ (2) 意匠法/商標法 第10版 (早稲田経営出版)
弁理士試験 エレメンツ (3) 条約 / 不正競争防止法 / 著作権法 第10版 (早稲田経営出版)
なお、エレメンツの他に目ぼしい参考書に
通勤時間で攻める! 弁理士スタートアップテキストがあります。
このスタートアップテキストもコンパクトにまとまっていて読みやすいのですが、基礎学習としてもちょっとボリューム不足なため、今回はおすすめしませんでした。
過去問集のおすすめ
基礎固めをした後は過去問で演習しましょう。
「過去問と全く同じ問題はでないから解く意味がない」という意見があるかもしれません。
しかし、実際には過去問を変形して出題されたり、周辺知識が問われたりしていますし、過去問演習で出題形式に慣れるメリットもあります。
過去問で勉強するときは単に解答を覚えるのではなく、考え方や関連事項まで理解していくと効果的です。
それでは、短答、論文、口述式試験のおすすめ過去問集を紹介していきます。
短答式試験の過去問集
短答式試験ではダントツでおすすめなのがLECの過去問集です。
受験生の間では定番の参考書です。
何と言っても10年分という圧倒的ボリューム!
経験上、確実に合格ラインに達するには10年分は抑えておいた方がよいです。
他の出版社から5年分の過去問集などが出されていますが、10年分勉強してくる受験生に力負けしてしまいます。
LECの過去問集は法改正への対応も素早く、例えば、私が受験した頃に大規模な法改正(平成23年)があったとき、驚異的な早さで改訂版が出版されたのを覚えています。
2021年版 弁理士試験 体系別短答過去問 特許法・実用新案法・意匠法・商標法 【過去10年分収録】 (弁理士試験シリーズ)
2021年版 弁理士試験 体系別短答過去問 条約・著作権法・不正競争防止法 【過去10年分収録】 (弁理士試験シリーズ)
論文式試験の過去問集
論文式試験の過去問集は、LECまたはTACから出されているものがおすすめです。
それぞれの特徴を説明します。
LECの論文過去問集の特徴
・7年分収録
・1つの問題に対して答案例、講師参考答案の2種類の答案を掲載。合格ライン超えを狙う答案と、高得点を目指す答案の違いを学べます。
・答案構成を掲載しているので、答案に取り掛かるまでの思考プロセスを辿ることができます。
2021年度 弁理士試験 年度別論文過去問
TACの論文過去問集の特徴
・10年分収録
・問題文の読み方、答案構成を載せており、思考プロセスがより丁寧に解説されています。
弁理士試験 論文式試験 過去問題集 2021年度
TACの過去問集はAmazonで試し読みできるのでぜひチェックしてみてください。
上記の特徴を参考に、気に入った方の参考書で構わないと思います。
口述式試験の過去問集
口述式試験の過去問集もLECまたはTACから出されているものがおすすめです。
内容的にほとんど違いはありませんが、TACの過去問集はAmazonや書店で買えるのに対して、LECの過去問集はLECのサイトでしか買えないようです。
もしLECのウェブページのアカウントを持っていないのなら、TACの過去問集の方が購入しやすいです。
弁理士 2021年版 口述アドヴァンステキスト
東京リーガルマインドLEC総合研究所弁理士試験部
弁理士試験 口述試験過去問題集 2021年度
法文集のおすすめ
勉強の際、常に手元に法文集を置くようにしましょう。
おすすめなのは四法横断です。
四法横断では、特許法・実用新案法・意匠法・商標法の対応関係が分かるように掲載されているのが特徴です。
どういうことかと言うと、例えば、新規性を規定している特許法29条1項、実3条1項、意3条1項が縦に並べて掲載されています(新規性の条項がない商標法は空白)。
4法を別々に覚えるよりも、体系付けることで知識が定着しやすくなるのが大きなメリットです。
弁理士試験 四法横断法文集 2022年度
ただし、1点注意が必要なのが論文・口述試験で貸与される法文集は四法横断ではないことです。
普通の法文集を引き慣れていないと、当日戸惑ってしまうおそれがあります(私は1年目に失敗しました……)。
数千円で安心が買えると思って、普通の法文集も用意しておきましょう。
令和3年改正 知的財産権法文集 令和4年4月1日施行版
工業所有権法逐条解説
工業所有権法逐条解説(通称「青本」)には条文とともに立法趣旨(条文が制定された目的)が掲載されています。
立法趣旨は試験に出題される重要な情報であり、知っておく必要があります。
ただし、青本はページ数が多く、非常にかさばるのがネックです。
私の場合は業者に依頼して青本を法域ごとに分冊してもらっていました。
青本を電子媒体で読みたい方は、特許庁公式サイトからダウンロードできますのでどうぞ(ファイルサイズが大きいので注意)。
青本の使い方ですが、いきなり頭から読むと時間がかかってしまいます。
問題を解きながら辞書代わりに使い、重要箇所にマーカーで線を引くのがおすすめです。
問題をたくさん解いて理解が深まったところで青本を読めば、重要なマーカー箇所を復習しつつ、取りこぼした箇所を拾っていくことができます。
工業所有権法(産業財産権法)逐条解説
審査基準
4法の審査基準も出題範囲なので、押さえておきましょう。
審査基準とは特許庁で出願が審査される際の客観的な判断基準のことです。
最新版の審査基準の冊子は十分に出回っていないようです。
私の場合は大型の書店で見つけたり、出版元の発明協会から入手したりしました。
ただし、特許庁公式サイトで電子版で公開されていますので、必ずしも本を購入する必要はありません。
基本書
基本書は法学者によって書かれた学術書のことです。
基本書に書かれた論点が弁理士試験に出題されることがあります。
しかし、弁理士試験の対策としては、以下の理由から基本書を購入する必要はないと思います。
- 基本書の重要箇所は、試験用の参考書で引用されているから
- 難解な本が多く、読み進めるのに時間がかかるから
- 最新の法改正を反映していない本が多いから
一応、主要な基本書のリストを紹介しておきます。
弁理士試験に関係なく、腰を据えて知財法を学びたい方はどうぞ。
標準 特許法〔第7版〕
特許法 第4版 (法律学講座双書)
3 新版 意匠法〈第3版〉 (【知的財産法実務シリーズ】)
商標法 第2版
商標
弁理士試験は独学できる?
以上紹介してきたのは、独学の方でも学習できる参考書ばかりです。
しかし、経済的・時間的余裕があるなら資格試験予備校に通うか、通信講座を受講することを強くおすすめします。
特に今まで法律を学んだことがない方は、講師の指導を受けた方が独学よりも短期合格しやすくなります。
ちなみに私自身は基礎講座からLECにお世話になり、自習のために参考書を利用していました。
一緒に勉強していたLEC受講生には一流大学卒の方もたくさんいましたが、勉強が得意な彼らでも弁理士試験の独学は難しいと考えていたようです。
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