弁理士試験は条文、青本(工業所有権法逐条解説)、判例など様々なテキストから出題されます。
そのひとつに審査基準があります。
この記事では、
・審査基準は弁理士試験でどのくらい重要性なのか?
・審査基準を勉強するときのポイントは?
・審査基準の入手先は?
といった審査基準に関する疑問に現役弁理士が答えていきます。
審査基準の重要性
審査基準とは?
まず、審査基準とは何かを確認しておきましょう。
簡単に言うと、審査基準は、特許庁での審査の指針となるものです。
審査官によって審査結果がブレないように客観的な基準を示す意義があります。
審査基準は法域ごとに
- 特許・実用新案審査基準
- 意匠審査基準
- 商標審査基準
の3種類に分かれています。
審査基準と弁理士試験の関係
弁理士試験の案内によると、試験科目について以下のように書かれています。
工業所有権に関する法令
・特許・実用新案に関する法令
・意匠に関する法令
・商標に関する法令
審査基準は法令ではありませんので、審査基準が試験範囲に含まれるとは明示されていないことになります。
しかし、実際には審査基準を知らないと回答困難な問題がよく出されています。
弁理士試験の出題範囲における審査基準の位置づけを考えてみましょう。
弁理士試験に出題されるテキストの重要度を下の表に示しました。
① | 法令(特許法、実用新案法、意匠法、商標法など)、条約 |
② | 審査基準、青本(工業所有権法逐条解説) |
③ | 判例(最高裁>知財高裁>地裁) |
④ | 学説 |
①が最重要で、②、③、④の順に重要度が下がっていきます。
表中のテキストをひとつずつ解説します。
①法令(特許法、実用新案法、意匠法、商標法など)、条約
法令が最重要なのは言うまでもありません。
法令の中でメインに出題されるのは特許法、実用新案法、意匠法、商標法、著作権法、不正競争防止法です。
これらの法令を総称して知的財産権法と呼びます。
知的財産権法の上位には民法、民事訴訟法などがありますが、これらの法令からも一部出題されます。
法令と並んで重要なのが、国家間での取り決めである条約です。
法令、条約は出題頻度が高いから重要というだけではなく、国で承認された権威のあるテキストです。
論文答案で根拠として条文番号を挙げれば、強い説得力を持たせることができます。
②審査基準、青本(工業所有権法逐条解説)
審査基準は知的財産権法に付随するテキストとして重要度は2です。
特許庁ウェブサイトで出されている公式文書のため、信頼性があります。
同じく特許庁ウェブサイトに載っている重要なテキストとして青本(正式名称は工業所有権法逐条解説)があります。
青本は、知的財産権法を条文ベースに詳細に解説しており、2000ページ超の長大な文書です。
青本の詳細を知りたい方は下記の記事をどうぞ。
③判例(最高裁>知財高裁>地裁)
有名な知財判例は弁理士試験に出題されます。
判例は一般に上位の裁判所で出されたものが権威性が高いと考えられています。
裁判所の序列は、最高裁判所・知的財産高等裁判所・地方裁判所の順です。
ただし、裁判所の序列=重要度とは言い切れず、自分で重要な判例を判断するのは難しいです。
判例は参考書や予備校の講座で学ぶようにしましょう。
ここでは定番の参考書を1冊紹介しておきます。
知的財産法判例教室
④学説
学説は、法学者によって主張されている考え方のことです。
有力な学説もあれば、少数の学者のみが支持している学説もあり、正に玉石混交です。
弁理士試験対策としては学説を個別に勉強する必要はありません。
予備校のテキストなどで引用されている学説のみ覚えればOKです。
結論 → 審査基準の勉強はかなり重要
上述したように審査基準は、弁理士試験における重要度が高いため、勉強が必要です。
審査基準を勉強することで審査の考え方を知ることができ、特に事例問題に役立ちます。
審査基準勉強の効率化ポイント
審査基準は重要と言いましたが、現実には時間が取れずに手が回らない方は多いと思います。
法域ごとにポイントを押さえて、いかに効率的に勉強するかが大切です。
特許・実用新案審査基準のポイント
特許・実用新案法の論文試験では事例問題が大きな割合を占め、審査基準の知識を用いる機会が多いです。
ただし、ひとつ注意しておきたいのが、弁理士試験は法律の試験であることです(選択科目を除く)。
事例問題であっても特別な技術知識がなしで解けるように作られています。
一方、審査基準にはその技術の専門家でないと理解困難な事例が散見されます。
技術的に難しい事例は読み飛ばして時間を取られないように気をつけてください。
技術的に難しいかの線引きは過去問を解くことによって感覚的に分かるようになります。
いきなり審査基準に取り掛かるのではなく、予備校のテキスト→過去問演習→審査基準のように勉強を進めるとスムーズです。
意匠審査基準のポイント
意匠審査基準は事例の図面が豊富で分かりやすいです。
審査基準を補助教材的に使って勉強することで、暗記項目の記憶が定着しやすくなります。
図面自体は無理に記憶しようとしなくても問題ありません。
近年の過去問には図面は登場しておらず、今後も事例の図面がそのまま出題される可能性は低いと考えられるからです。
商標審査基準のポイント
商標審査基準では商標の類否判断(第4条第1項第11号)が最重要です。
類似する商標、非類似の商標、類否判断の理由付けを事例をベースに勉強していきましょう。
本試では、具体的な商標が提示され、類否判断をさせる問題がよく出題されています。
審査基準の入手方法
PDF版 → 特許庁ウェブサイトから
全ての審査基準のPDF版が特許庁ウェブサイトからダウンロード可能です。
特許・実用新案審査基準と意匠審査基準は特にページ数が多いので、一括ダウンロードする場合は注意してください。
書籍版 → 商標以外は入手困難
商標審査基準の書籍版はAmazonや大型書店で簡単に入手できます。
商標審査基準
しかし、特許・実用新案審査基準と意匠審査基準の書籍版はあまり出回っていません。
発明協会のセミナーで配布されたり、発明協会に在庫があったりする場合はありますが、確実に入手するのは難しいでしょう。
自分で印刷して製本するか、綺麗に仕上げたいのならキンコーズなどの業者に依頼して製本するのがよいでしょう。
予備校の審査基準講座
予備校で審査基準を勉強するなら単科講座が開かれているLECがおすすめです。