独学で弁理士試験に合格できる?【結論→独学は相当難しい】

弁理士試験は独学できる?

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この記事は、現役の弁理士が書いています。

独学で弁理士試験に合格したい」という相談を時々受けることがあります。

そのような相談に対して、少し言いにくいのですが、独学は相当難しいと最初に伝えるようにしています。

独学が難しい理由は単に「試験が難しいから」ではなく、弁理士試験ならではの事情があります。

本ページでは独学が難しい理由5つを説明し、独学ではなく資格予備校、通信講座の活用をおすすめしています。

ただし、「それでも独学しか無理」という方もいると思いますので、独学者のための勉強スケジュールの立て方、おすすめの参考書なども詳しく解説します。

目次

独学で弁理士試験合格が難しい5つの理由

法律の勉強に慣れていないから

弁理士試験は法律の知識・理解を問う試験ですが、これから弁理士を目指すとき、すでに法律の勉強をしたことがある人は少ないでしょう。

受験生の多くは理系大学・大学院の出身だからです。

条文には法律用語、独特の言い回しがあり、初心者が自力で読みこなすのは困難です。

条文の解説書を活用する手もありますが、疑問が生じたときに質問する相手がいないのは非常に勉強効率が悪いです。

しかも疑問に思うならまだマシで、より深刻なのは疑問にも思わず、誤って理解してしまった場合です。

誤解が積み重なって一度体系化されてしまうと、後で矯正するのはかなり大変になります。

さらに、弁理士試験では条文知識だけでなく、条文を事例に適用する力も求められますが、これを身に着けるのも独学では厳しいものがあります。

条文を適用する力は、実技・技能的な要素が強く、講師や他の受講生との対話、問題演習と採点者からのフィードバックなどを通じて効率的に獲得できるものだからです。

市販の参考書が限られているから

弁理士試験の参考書はあまり種類が多くありません。

資格試験の中では弁理士試験の受験生は比較的少ないですし、独学する人はさらに少ないので、仕方ないところではあるでしょう。

「こんな参考書が欲しい」と思っても、なかなか見つからないのが現状です。

一方、資格予備校の弁理士講座で使用される教材には講師のオリジナルテキストなどもあり、非常にバリエーションが豊富です

ですが、これらのテキストは単品で販売していない場合がほとんどです。

勉強計画を立て難いから

弁理士試験は、短答式試験、論文式試験(必須科目、選択科目)、口述式試験からなり、それぞれの試験に合わせた勉強をしなくてはなりません。

学力のピークを試験当日に持ってくるには計画的な勉強が不可欠です。

例えば、短答式試験が終わった後に論文式試験の準備を0から始めても間に合いません。

資格予備校であればカリキュラムに沿ってバランスよく学習を進めることができますが、一人で計画を立てるのは非常に難しいです。

論文式試験の採点基準が分からないから

特許庁のウェブページに論文式試験過去問の論点が掲載されていますが、採点基準の詳細は公表されていません。

「何を書けば合格なのか?」、「自分の答案と何が違うのか?」を自力で考えるのはほぼ不可能です。

市販の過去問集には模範解答が付いていますが、模範解答を参照したとしても、自分の答案がどのように採点されるのかはやはり分かりません。

独学ではなく、第三者に目で自分の答案を採点してもらうことで、だんだんと採点基準が理解できるようになっていきます。

法改正をフォローするのが大変だから

弁理士試験の受験生は必ず法改正をフォローしなければなりません。

法改正前に〇だった答えが、法改正後に×になることがあるからです。

ちなみに特許法の法改正は、近年では2021年、2019年、2015年、2014年、2011年に行われており、なかなかの頻度です。

試験勉強している最中に法改正されてしまう可能性は十分にあると思います。

特許庁のウェブサイトを自分で監視するのは負担ですし、特許庁からリリースされる煩雑な情報を自分で読み解く必要もあります。

独学ではなく、情報の監視・整理を資格予備校に任せることができれば、その分、学習に集中することができます。

独学より資格予備校・通信講座がおすすめ

以上の理由により、やはり資格予備校・通信講座を利用するのがおすすめです。

独学する理由として、経済的・時間的な理由があると思います。

経済的理由について、考えようによっては予備校費用は弁理士になって稼ぐための先行投資とも言えます。

つまり、お金をかけた分、短期合格の可能性を高めることができるわけです。

予備校に通学する時間がないのならウェブ配信やDVDで通信講座を受講する手もあります。

通信講座の時間すら取れない人は独学する時間もないわけですから、その場合、環境を見直すか、受験自体を考え直す必要があるでしょう。

また、完全な独学ではなく、論文講座だけ、答練だけを受けるといった「半独学」も検討してみてください。

資格予備校・通信講座を使うのであれば、最もおすすめなのは資格スクエアです。

それでも独学したい場合の勉強法

……とは言え、経済的な理由などで独学せざるを得ない方もいると思います。

難しいことは承知で独学者のための勉強法を解説していきます。

弁理士試験の勉強スケジュール

最初に勉強スケジュールを立ててみましょう。

弁理士試験合格までにかかる勉強時間は平均3,000時間と言われています。

1年間で合格しようとするなら月250時間、1日当たり約8時間です。

休日に一日中勉強したとしても、ほとんどの人がこれほどの勉強時間を取れないと思います。

もし1年で合格したいなら相当計画的かつ効率的に勉強する必要があります。

以下は、勉強スケジュールの一例です。

4月~12月 基礎学習期間。
      全科目(特実意商、著作権法、不正競争防止法)を入門テキストで学習する。
      1つの単元の学習が終わるごとに短答・論文の過去問で理解を確認する。
      時間がかかり過ぎるなら、重要な問題だけ解くor過去3年分だけ解くなど工夫する。

1~5月  短答・論文の過去問を中心に学習する。
      勉強の進み具合に応じて短答・論文の勉強時間の比率を調整する。
      勉強が遅れている場合は、1年目は短答のみ合格目標に切り替えるのもあり。
      できれば短答模試を受けておきたい。

5月頃   短答式試験

5~7月  短答式試験の終了後、ただちに論文式試験に全力投球する。
      論文模試を早い段階で受けて、現在の到達度を確認する。
      予想問題集や工業所有権逐条解説(青本)も利用して論点を網羅的に押さえる。

7月頃   論文式試験

7~10月  とりあえず一息つく。
      口述過去問、法文集、青本で学習する。

10月頃   口述式試験

なお、注意点として

  • 標準的な試験日程を想定しています。近年、日程が新型コロナウイルスの影響で大きく変更される場合があります。
  • 論文式試験(選択科目)を除外して計画を組んでいます。必要に応じて選択科目の勉強時間を組み込むようにしてください。
  • 科目ごと、試験ごとの勉強時間の配分は細かく決めておかなくてよいと思います。時間よりも理解度で勉強のペースを調整しましょう。

弁理士試験おすすめの参考書

おすすめの参考書を下記記事にまとめています。

各試験の学習アドバイス

独学の場合、予備校の講師や受講生との交流がないため、学習中の迷いも多いと思います。

自分や勉強仲間の経験から、独学したいあなたへのアドバイスを試験別にまとめました。

短答式試験

基礎ができた後は、過去問(できれば10年分)をひたすら周回するのがおすすめです。

枝別に〇×を答えていって9割以上正答できれば、ほぼ合格ラインに達しています。

過去問の他には予備校の模試を受けておくと、次のようなメリットがあります。

  • 新傾向問題を対策できる
  • 本番と同じ環境で60問を解ききる訓練ができる
  • 他の受験生のレベルが分かる

力を入れたい科目は、当然ながら論文・口述でも出題される特実意商ですが、その他の科目も足切りを回避できるくらいには仕上げましょう。

論文式試験

論文式試験はまず準備不足に注意です(私は一年目に失敗しました)。

一気に短答・論文の合格を決めたいなら、短答式試験の前にある程度は論文の勉強を進めておかなければ間に合いません。

そして、独学者にとって最大の課題は採点基準を知ることです。

論文式試験では模試の受験を強くおすすめしたいです。

人から採点を受けると、おそらく最初は点数の低さに愕然とすると思います。

54点がボーダーラインと言うと6割解ければ合格のように見えてしまいますが、個人的な感覚では8割といったところです。

採点の厳しさを知り、間違えた部分・書き足りない部分を埋めていくことで点数を上げていきましょう。

口述式試験

口述式試験までたどり着いたのなら、ほとんどアドバイスすることはありません。

弁理士会の会派が主催する模試(無料のはずです)を受験して場慣れしておきましょう。

受験生同士で問題を出し合うのも効果的です。

もし受験生の知り合いがいない場合は、論文式試験を受けるときに会場で自分と同じ地域の人を探してみましょう。

ここで知り合った人から模試の情報をもらえたり、合格後にも付き合いが続くかもしれません。

独学者のためのリンク集

弁理士試験の独学者は、全て自分で情報収集しなければならないのが辛いところです。

チェックした方がよいサイトを紹介していきましょう。

弁理士試験に関する情報

特許庁が公表している、弁理士試験関係の情報を説明したページです。

例えば、次の情報が入手できます。

  • 弁理士試験公告

 受験手続きの詳細を確認して間違いのないようにしましょう。

 特に試験免除のある方は忘れずに免除手続きも行ってください。

 最近、新型コロナウイルスの影響で日程が例年とは変わってきています。

 勉強スケジュールを立てる前に日程をよく確認してください。

  • 弁理士試験統計

 受験者数、合格率、合格者の内訳など詳細なデータが載っています。

  • 弁理士試験過去問

 かなり遡って過去問を閲覧できますが、論文試験は問題・論点だけ、口述試験はテーマだけしか公表されていません。

 過去問演習をするなら、市販のテキストを使って行ってください。

 このページでは出題傾向をざっと見るくらいでよいと思います。

  • 合格発表

 合格発表日に合格者の番号が掲載されます。

法令検索

法文集は当然持っていていただきたいですが、このサイトからも各種法律が閲覧できます。

出先でちょっと確認したいときや、文字列検索をしたいときなどに重宝します。

特許・実用新案審査基準
意匠審査基準
商標審査基準

四法の審査基準も試験範囲です。

冊子でも販売されていますが、書店やネット通販には在庫が十分にないようです。

大型書店なら見つかりやすいかもしれません。

改正情報

改正情報を定期的にチェックするようにしてください。

予備校に通えば改正情報をすぐにキャッチできますが、独学者は自分で監視しておく必要があります。

工業所有権法逐条解説

工業所有権法逐条解説(青本)は条文の趣旨を解説した資料です。

かなり長大ですが、しっかりと試験範囲に入っています。

いきなり頭から読むのは辛いので、問題を解きながら辞書的に使っていけばよいと思います。

紙で読みたい方は、製本された青本を買うことができます。

ただし、持ち運び困難なくらいにかさばるので要注意です。

私の場合は業者に依頼して法域ごとに分冊してもらいました。

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