この記事は、企業の知的財産部で働く現役弁理士が書いています。
大学生・大学院生で弁理士になりたい方や興味を持っている方。
「学生のうちに弁理士を目指すべき?」、「どうやって弁理士になれるの?」
などなど疑問がたくさんあると思います。
このページを読むと、
・学生で弁理士になるメリットとデメリット
・弁理士になるための方法
が分かります。
弁理士に関する情報
まず、弁理士がどのような職業かを様々な観点から見ていきましょう。
弁理士業務
弁理士とは、知的財産権に関する業務を代理するために必要な国家資格です。
ここで知的財産とは、特許、実用新案、意匠(デザイン)、商標を指します。
弁理士は、知的財産権を取得するための出願書類などの作成を行います。
弁理士に依頼せずに、権利を取りたい本人が書類作成することもできるのですが、専門的な知識・技能を要するため、現実では難しいケースが多いです。
そこで、知財の専門家である弁理士が頼りにされるわけです。
弁理士の就職先
弁理士の主な就職先は、特許事務所とメーカーの知的財産部(知財部)の2つです。
特許事務所
特許事務所では、クライアント(その多くがメーカー)からの依頼に応じて、弁理士たちが上記の弁理士業務に日々取り組んでいます。
全弁理士のうち、 特許事務所に所属 している弁理士の割合は約7割です。
職場としての特許事務所の特徴は、
- 弁理士資格が活かせる
- 個人プレーの要素が強い
- 勤務規則が比較的緩い
メーカー知財部
弁理士はメーカーの知財部にもいます(企業内弁理士と言います)。
知財部では自社の知的財産権を取得したり、取得した権利を管理したりしています。
具体的な業務内容は会社によって様々で、特許事務所への特許出願依頼、知財訴訟、ライセンス交渉、知財戦略の立案などです。
出願業務については特許事務所に全件依頼している会社がある一方、自社で手続きしている会社もあります。
知財部の特徴は、
- 業務の幅が広い
- 調整業務が多い
- 勤務規則は特許事務所より厳しい傾向
弁理士資格の必要性
知財の仕事をするのに弁理士資格は必須ではありません。
自分にとって弁理士資格が本当に必要か?という点はよく検討しておく必要があると思います。
特許事務所の場合
特許事務所には弁理士の他に、弁理士資格を持たない補助者も所属しています。
補助者は、クライアントの代理することは法律上できませんが、弁理士の監督下で業務を行うことができます。
つまり、就職時に弁理士になっていなくても問題ありません。
ただし、特許事務所では将来的な資格取得が強く推奨されます(義務と言ってもいいかもしません)。
特許事務所でステップアップするには弁理士になる必要があるからです。
メーカー知財部の場合
知財部員は弁理士資格を持っていない人が多数派です。
上述したように弁理士資格がなくても知財部で働く分には支障ありません。
弁理士の人数は会社によって異なり、1人もいないこともありますし、10人以上所属している会社もあります。
なぜ弁理士が知財部にいるの?
と疑問に思いませんか?
知財部員が弁理士になる理由は、社内評価を高めるためだったり、将来の転職のためだったり様々です。
また、特許事務所で働いていた弁理士が知財部に転職してきたパターンも多いです。
企業内弁理士になるメリットを詳しく知りたい方は以下の記事をどうぞ。
大学生・大学院生が弁理士になるメリット5選
弁理士試験合格者の平均年齢は37~38歳。
20代の合格者は15~20%程度です。
つまり、大学生・大学院生の弁理士はかなり少数派と言えます。
他の人と差別化することで生まれるメリット5つを説明します。
知財職への就職に有利
特許事務所や知財部に就職するのに弁理士資格は必須ではありませんが、有利になります。
実務に用いる法律知識を持っていることや、資格取得に向けて努力したことが人事に評価されるからです。
メーカーに新卒で就職する場合、普通は入社後に配属が決定されるため、希望通りに部署に入れるとは限りません。
しかし、弁理士資格を持っていれば知財部にほぼ確実に入れるはずです。
余程のことがない限り、弁理士を採用しておきながら知財部以外に配属することはないでしょう。
知財キャリアを早くスタートできる
私が見てきた限りでは、知財業界に入ってくる人の平均年齢は30歳前後です。
弁理士になって新卒で知財職に就けば、他の人よりも早めにスタートを切れます。
同年齢の人がスタートする頃には、弁理士資格、数年分のキャリアの両方を手にすることができます。
若い方が勉強効率がよい
学生の方にはピンと来ないかもしれませんが、年齢とともに勉強効率は下がってしまいます。
弁理士試験の受験生は30代以上が大半なので、学生のうちに勉強すれば有利に進められるメリットがあります。
就職後、仕事に専念できる
就職後に試験勉強せずに済むのも大きなメリットです。
働きながら受験している場合、勉強時間を取りにくく、なかなか合格できない人をよく見かけます。
弁理士試験合格者の平均受験回数は約4回となっており、データからも長期戦を強いられている受験生が多いことが分かります。
転職・独立のチャンスが広がる
弁理士資格は転職の場で強力な武器になります。
真偽の分からない業務実績をアピールするのが難しい反面、資格は客観的な実力の証明となってくれるからです。
また、独立して特許事務所を開く際に弁理士資格は必須です。
「転職・独立は考えていない」という方でも5年先、10年先には気が変わっているかもしれません。
早めに弁理士資格を取っておけば、チャンスが来たときに対応しやすくなります。
大学生・大学院生が弁理士になるデメリット2選
一方で大学生・大学院生が弁理士になるデメリットもあります。
学生生活との両立
働きながらの受験は大変と言いましたが、学生でも決して楽ではありません。
勉強・研究・アルバイト・遊びなどに忙しい学生さんは多いでしょう。
少し厳しい話になりますが、「弁理士になる」目標のためにはそれなりの犠牲を覚悟する必要があります。
進路が絞られる
知財の道に進むと、その後、研究職などにシフトするのは難しくなります。
その逆の研究職→知財部への転職は難しくありません。
知財職の募集には未経験OKのものもありますし、同じ会社内で研究開発部門から知財部に異動できる場合もあります。
新卒で知財職に就くなら、ある程度その先を見据えておくことが必要です。
弁理士になるには
弁理士になるには、
- 弁理士試験に合格
- 実務修習
- 弁理士登録
の3ステップが必要です。
詳しくは下記の記事で説明しています。
弁理士試験の勉強法
弁理士試験の勉強法には、独学か、予備校を利用するかの2つがあります。
独学はコストが低いのがメリットですが、かなり難易度は高いです。
独学について詳しくは下記の記事をどうぞ。
予備校を利用するとなると、通学時間とコストが気になると思います。
しかし、オンライン学習に対応したサービスもありますので、スマホ1つでも受講可能です。
コストについては確かに独学よりも安価ではありませんが、最近のサービスは低価格化しています。
10年前は50~60万円が相場だったところ、近年では20~30万円程度で受けられる講座パックも登場しています。
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