この記事は、30代の弁理士の方やこれから弁理士を目指す方に向けて書いています。
実は、知財業界に飛び込む人で多いのが30代です。
例えば、新卒で研究職に就き、30代で知財職への転向を考えるパターンをよく見かけます。
一方、メーカーの知財部に在籍していて、弁理士になったことをきっかけに特許事務所に転職する人などもいます。
このページでは、30代弁理士が転職を成功させるために押さえておくべきポイントを解説します。
30代弁理士の転職難易度を決める要素4つ
30代は弁理士としてはまだまだ若手と言える年齢です。
30代弁理士の転職は基本的にそれほど難しくありません。
しかし、20代と異なり、経歴の個人差がはっきりと出ててくるのが30代です。
30代弁理士の転職難易度を左右する4つの要素を説明します。
とは言え、全ての要素を満たすのはほぼ不可能ですので、各要素を加点方式で考えればよいと思います。
知財経験の有無
転職の最強カードは知財経験です。
即戦力を求める求人では知財経験を募集要件にしていることがあります。
ただ、知財経験と言っても特許事務所、メーカー知財部のいずれの経験かで大きく異なります。
両者では業務内容に差があるからです。
特許事務所は特許明細書の作成が中心、知財部では権利化・管理・活用を含む業務を行うのが一般的です。
特に募集要件が厳しい場合、知財部の求人で、知財部での勤務歴を必須としていることもあります。
一方、知財未経験者は未経験可の求人を探すことになります。
未経験者には年齢制限が設けてられている場合があり、よく見かけるのが「実務未経験は35歳まで」という文言です。
それでは36歳以上は諦めるしかないかと言うと、そうではありません。
年齢制限がない求人もありますし、弁理士資格を持っていれば多少はカバーできます。
また、次に挙げる他の要素で挽回できるチャンスがあるからです。
研究開発経験の有無
経歴でもうひとつ重要なのが研究開発経験です。
研究開発の過程で得られる技術知識が知財業務に役立つからです。
具体的な技術知識は分野によって様々ですが、極一部を挙げると
- 2次元の複雑な図面から立体物を把握する力
- プログラムのソースコードを読む力
- 複雑な電気回路を理解する力
- 化学分析の結果を解釈する力
などです。
大学・大学院での研究でも技術知識を得られますが、より好ましいのはメーカーでの研究開発です。
大半の弁理士はメーカーのエンジニアを相手に仕事をしているからです。
メーカーの中で研究開発をどのように進めていくのかを理解できていれば業務遂行上のアドバンテージになります。
専攻分野
専攻分野のマッチングも重要な要素です。
知財部志望なら当然、会社の事業内容とのマッチングのことです。
特許事務所志望ならばクライアントの事業内容となります。
特許事務所の求人では募集している分野を明記していることがあり、その場合は自分とのマッチングが分かりやすいです。
分野が明らかではない求人の場合は、特許事務所が代理している特許出願の傾向を調べることで募集分野を推測できます。
調べ方としては、特許庁の検索サイトJ-PlatPatに開き、「代理人」の項目を選択し、特許事務所名を入力して検索してください。
例えば、検索でヒットした特許文献が機械・電気・化学の分野であれば、この中のいずれかであることが分かります。
さらに化学の出願が最近増えてきているのであれば、化学の担当が欲しいのかもしれないと推測できます。
語学力
近年、産業のグローバル化により外国出願が増加しています。
国内にしか市場がない企業に勤めない限り、語学力は必須と思ってください。
外国語の中で最重要なのはやはり英語です。
英語を使えればアメリカやヨーロッパへの特許出願には困りませんし、外国の特許事務所とのやり取りも英語ベースで問題なく行えます。
英語力を客観的に測るにはTOEICの受験がおすすめです。
必要な英語力、TOEICのスコアについては下記の記事で詳しく説明しています。

30代弁理士の転職のポイント5選



ここからは30代弁理士が転職するために気を付けたい5つのポイントを説明します。
早期内定を得るために参考にしてみてください。
職歴を応募先の仕事に結び付ける
知財歴、研究開発歴などの職歴が加点要素になることはすでに説明しました。
自分の職歴を応募先の仕事に結びつけて説明できるようにしましょう。
つまり、経験によって身に付けた知識が、発明を理解したり、明細書を書いたりする上でどのように活かせるのかです。
もし活用できる職歴がなければ、DIYや自作パソコンなどの趣味でも使える物は何でも使いましょう。
私の経験ですが、あるメーカー知財部の面接で「趣味で工作などの経験はありますか?」と質問されたことがあります。
説得力のある志望動機を用意する
志望動機は仕事へのモチベーションを表すものであり、知財業界に限らず重要とされています。
特に知財未経験から転職する方は、なぜ他業界から転職するのかを含めて論理的な説明を準備しましょう。
理詰めで相手を説得する能力は弁理士業務に必須ですので、職業適性をアピールする意味でも志望動機には力を入れたいところです。
志望動機の作り方について下記の記事で詳しく説明しています。



スペックの向上を図る
英語力など自分のスペックを向上させることも有効です。
経歴はやり直しが効きませんが、スキルはこの先いくらでも身に付けることができます。
ただ、ひとつ気を付けたいのはスペック向上の勉強に時間をかけ過ぎないことです。
年齢が上がるにつれて市場価値が下がってしまうのは残酷な現実で、転職活動が遅れるのはよくありません。
両立が大変ですが、勉強はあくまでも転職活動の障害にならない範囲で行ってください。
初年度の年収にこだわり過ぎない
特に未経験で特許事務所に転職したい場合、初年度の年収にはこだわり過ぎないことをおすすめします。
特許事務所の多くは歩合制の給与形態ですので、未経験者が年収減になるのは仕方ありません。
その分、特許事務所では実力次第で一般企業とは比べ物にならないほど年収が伸びていきます。
年収にこだわるにしても将来を見据えて考えるようにしましょう。
転職エージェントを使う
多くの方は仕事で忙しい中、並行して転職活動を進めることになると思います。
自分に合った求人を効率的に探すには、100%自力よりも転職エージェントの利用がおすすめです。
転職エージェントには
- 非公開求人に応募できる
- エージェントからアドバイスがもらえる
- スケジュールを調整してもらえる
- 訊きにくい質問を代行してもらえる
といったメリットがあります。
おすすめの転職エージェントについては下記の記事をどうぞ。



30代弁理士を目指す方へ



この記事を読んでいる方には弁理士ばかりではなく、これから弁理士を目指す方もいると思います。
実際、弁理士資格を取ってから転職する人は多いです。
しかし、ひとつ注意したいのは資格勉強しているうちに年数が経ってしまうことです。
30代にとって一年の差は大きいので、短期で弁理士試験に合格できそうにない場合は転職してから資格を取る方針も検討の余地があります。
転職先によっては、現職よりも勉強時間を取りやすい環境になることがあります。
特に特許事務所は弁理士資格の取得を奨励しているので、支援制度が充実していることが多いです。
弁理士試験について詳しく知りたいは下記の記事をどうぞ。


