この記事は、2012年弁理士試験に合格した弁理士が書いています。
弁理士試験の難易度について、最近の傾向、他の資格との比較など多視点で考察していきます。
難易度の低下傾向が続いていますので、受験するなら今がお得です。
後半では弁理士試験の難易度を下げる方法を紹介してます。
弁理士試験の難易度は?
合格率からみる弁理士試験の難易度
試験の合格率は難易度を測る最も重要な指標です。
2020年弁理士試験の合格率は9.7%でした。つまり、およそ10人に1人が合格しています。
この数字を高いと見るか、低いと見るかは人それぞれでしょう。
大学受験と同じような感覚で「できるだけ1回で合格したい」と思っている人には低く見えるかもしれません。
一方、弁理士試験のような国家試験では複数回受験する人が珍しくないと知っていれば「まーこんなもんかな」と思うかもしれません。
実際、弁理士試験の一発合格者は全合格者数のわずか11.8%で、合格者の平均受験回数は4.02回です(2020年)。
4回も受験したくないと心配になっているかもしれませんが、安心してください。
受験生の大半は働きながら受験しており、あまり勉強せずに惰性で受けている人が平均回数を引き上げているからです。
努力と工夫次第で短期合格を十分に目指せます。
ここ数年の弁理士試験の合格率は以下のように推移しており、全体的に上昇傾向です。
現在合格しやすい状況が続いている今がチャンス!もし受験するならお早目に。
2015年 | 6.6% |
2016年 | 7.0% |
2017年 | 6.5% |
2018年 | 7.2% |
2019年 | 8.1% |
2020年 | 9.7% |
受験者層からみる 弁理士試験の難易度
試験の難易度は合格率からだけでは正確には判断できず、どんな人が受験しているのかが大きく影響してきます。
弁理士試験受験者のプロフィールは次のとおりです。
- 約7割が会社員か特許事務所の所員。
- 30~40代がボリュームゾーンで平均42歳(合格者の平均年齢は38歳)。
- 9割以上が大卒・大学院卒または大学生・大学院生。
- 文系・理系の割合は理系が7割程度。
つまり「30代の理系社会人が弁理士試験の受験を開始し、40歳前後で合格する」パターンが多いと推測できます。
もし、あなたが次の特徴に該当するなら大多数の受験生よりも有利です。
- 20代である
試験勉強への慣れという意味で、数年前まで学生だった(または現在学生である)人は有利です。
若年層の方が、あまり馴染みのない知財分野の勉強にも抵抗なく取り組めるでしょう。
- フルタイムの仕事に就いていない
会社か特許事務所に勤める受験生のほとんどがフルタイムで働いていると考えられます。
パートタイムで働いていたり、職に就いていない人は、フルタイムの人よりも勉強に使える時間を多く取ることができます。
- 法律を勉強したことがある
理系大学出身者で法律を勉強したことがある人は少ないでしょう。
法律を勉強をしたことがあるのなら、それだけで他の受験生よりも一歩リードしています。
特に民法を勉強した経験は役に立ちます。
なぜなら知財法は民法をベースにした法律(特別法)だからです。
このように自分が受験生の多数派よりも有利な点があれば、あなたにとっての弁理士試験の難易度は下がります。
勉強時間からみる弁理士試験の難易度
弁理士試験合格までの平均勉強時間は3,000時間です。
もし1年間で3,000時間勉強しようと思うなら、なんと一日約8時間です。
ほとんどの人には時間的に無理な計画だと思います。
勉強の効率化を図るか、2年以上をかけた計画に切り替えるかが必要となってくるでしょう。
他の士業と比べた弁理士試験の難易度
弁理士試験と、その他の士業の国家試験と比べた難易度も気になるところです。
士業とは「士」が付く国家資格(弁護士、司法書士など)の総称で、世間から一定の社会的地位が認められる資格でもあります。
士業の国家試験の受験者数、合格者数、合格率、平均勉強時間、受験資格の比較は次の表のとおりです。
弁理士 | 司法試験 | 司法書士 | 公認会計士 | 税理士 | 行政書士 | |
受験者数(人) | 2,947 | 3,703 | 11,494 | 13,231 | 26,673 | 41,681 |
合格者数(人) | 287 | 1,450 | 595 | 1,335 | 5,402 | 4,470 |
合格率(%) | 9.7 | 39.16 | 5.2 | 10.1 | 20.3 | 10.7 |
平均勉強時間(h) | 3,000 | 6,000 | 3,000 | 4,000 | 4,000 | 600 |
受験資格 | なし | あり | なし | なし | あり | なし |
司法試験との比較
司法試験の合格率39.16%は弁理士の合格率よりもかなり高く、一見難易度が低く見えますが、実はそうではありません。
司法試験を受験するには法科大学院を修了するか、予備試験に合格している必要があるからです。
つまり、一定の学力のある人しか司法試験を受験できないと言うことです。
難易度を比較するには平均勉強時間を比較した方がよく、司法試験では弁理士試験の2倍も勉強しないと合格できないと分かります。
結論としては、弁理士試験は司法試験よりも難易度が低いです。
司法書士との比較
司法書士試験の合格率5.2%は、弁理士試験の合格率よりも低いです。
平均勉強時間と受験資格の点では弁理士と司法書士に違いはありません。
したがって、弁理士試験は司法書士試験より難易度が低いと言ってよいでしょう。
公認会計士との比較
弁理士試験と公認会計士試験は合格率にほぼ差はなく、公認会計士試験の方が平均勉強時間がやや長くなっています。
弁理士試験は公認会計士試験よりも難易度がやや低いと考えられます。
税理士との比較
税理士の合格率20.3%は弁理士の合格率よりもかなり高いです。
税理士試験は科目数が多く、弁理士試験よりも平均勉強時間が長くなっていますが、1科目ずつ受験してもよいので、難易度は軽減されています。
総合的にみると、弁理士試験は税理士より難易度が高いと考えられます。
行政書士との比較
弁理士試験と行政書士試験の合格率はほとんど変わりませんが、弁理士試験の方がかなり勉強時間が長いです。
弁理士試験は行政書士試験よりも難易度が高いと言えます。
弁理士試験の難易度を下げる5つの方法
ここまで弁理士試験の難易度を検証してきましたが、だいたいの難易度が掴めましたか?
この項目では弁理士試験の難易度を下げる方法を考えていきます。
弁理士試験自体の難易度をコントロールすることは受験生には不可能ですが、自分にとっての難易度を下げることはできます。
弁理士試験の難易度を下げる具体的な方法を説明していきます。
資格予備校・通信講座を利用する
弁理士を目指すには独学するよりも資格予備校・通信講座を利用しましょう。
講師に教わることで効率的に勉強でき、勉強時間の短縮になります。
また、講座の日程に沿って勉強すればよいので、自分で勉強スケジュールを立てる必要もありません。
法改正などの試験情報も自分で監視しなくてもよくなります。
独学の難易度が高い理由は下記の記事で詳しく説明しています。
試験勉強に専念する
資格取得後に転職を予定している場合、先に離職しておけば勉強時間を多くとることができます。
リスクのある方法ですが、転職が難しくない20代なら検討の余地はあると思います(私自身、無職期間を経て特許事務所に就職することができました)。
経済状況によってはパートタイムの仕事に就くのもアリでしょう。
試験勉強のサポートがある特許事務所で働く
弁理士になった後に特許事務所に転職する予定なら、先に転職してしまうのも手です。
年齢・経歴にもよりますが、特許事務所への転職はそれほど難しくなく、弁理士資格の有無を問わない求人も多いです。
勉強サポートが充実している特許事務所には、試験休暇制度、勉強費用の補助、所内勉強会などがあります。
サポート制度がなかったとしても、特許事務所では弁理士資格の取得を推奨しています。
会社に隠れてコソコソ勉強するよりも、応援してもらえる環境の方が学習が捗ることは間違いないでしょう。
免除制度を活用する
弁理士試験には免除制度があります。
短答式試験、論文式試験(必須科目)では合格から2年免除、論文式試験(選択科目)では合格から永久免除されます。
免除制度を利用して1年目に短答式試験合格、2年目に論文式試験・口述試験合格という計画も可能です。
「困難は分割せよ」の方針で目の前の試験に全力投球でき、一気合格を目指すよりも難易度が下がります。
隙間時間を活用する
隙間時間を活用して勉強時間を増やすことでも見かけ上の難易度は下がります。
早朝、通勤時、昼休みなど日常の中に使える時間は意外とあるものです。
周りの目があってテキストを広げられないのであれば、弁理士講座の音声を聴くといった工夫もしてみてください。
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