知的財産管理技能検定の難易度は?弁理士との比較。どちらがおすすめ?

知的財産管理技能検定の難易度は?

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知的財産管理技能検定(知財検定)は、知的財産を管理する技能を測る国家試験です。

知財検定は知財系の資格としては知名度が高く、メーカーの知財部員、特許事務所の所員はもちろん、研究職や学生も受験しています。

このページでは知財検定の難易度、取得するメリットなどを解説しています。

また、知財検定と弁理士資格の比較も説明していますので、どちらを受けようか迷っている方はぜひ参考にしてください。

目次

知財検定の難易度

知財検定はレベルごとに1~3級に区分されています。

各級の難易度を説明します。

3級の難易度

3級は、学生や他業種の方でもそれほど苦労せずに合格可能な初級レベルです。

初学者が合格までにかかる勉強時間は50時間程度です。

知財と関わりがあるエンジニアの方が教養として取得している場合もあります。

知財職の方は上の級への通過点として捉えるのがよいでしょう。

2級の難易度

2級は知財知識の基礎が固まった中級レベルです。

知財職なら数年以内の取得を目指したいところです。

必要な勉強時間は3級と同じく50時間程度ですが、それは一定の知識を前提とした話です。

具体的には

  • 2年以上の実務経験
  • 知財検定3級合格

くらいを前提に考えてください(2級の受験資格より)。

1級の難易度

1級の難易度は2~3級とは大きく異なります。

3級の合格率60%程度、2級の合格率40%程度に対し、1級の合格率はわずか10%ほどです。

勉強時間の目安は2級合格から200時間程度です。

1級に合格すれば知財のプロとして申し分ないレベルでしょう。

知財検定の区分

上で説明したように知財検定には1~3級の区分があります。

ただし、1級だけはさらに(特許専門業務)、(コンテンツ専門業務)、(ブランド専門業務)に細分化され、それぞれの分野に特化した内容が出題されます。

2、3級取得者は浅く広い知識を身に付けたジェネラリスト、1級取得者は専門性を極めたスペシャリストの位置づけと言ってよいでしょう。

知財検定の試験方法

マークシートの解答用紙

すべての級で学科試験実技試験が行われます。

学科試験はマークシート方式の試験です。

正しい/誤っている選択肢を選ぶ問題や、空欄に補充する語句を選択する問題などが出されます。

各級の学科試験の問題数と試験時間は次のとおりです。

3級30問45分
2級40問60分
1級45問100分

表から分かるとおり、級が上がるにつれて問題数が多くなります。

そして問題文が長文化していくため、1問当たりの時間が長く設定されています。

実技試験は記述方式の試験です。

記述式と言っても、2、3級では正誤判定したり、空欄に補充する語句を選択したりする問題が出されており、論述する問題はほとんど出されていません。

問題数と試験時間は次のとおりです。

3級30問45分
2級40問60分

一方、1級では2、3級とは異なり、筆記試験と口頭試問からなる実技試験が行われます。

1級5問約30分

実技試験の具体的な流れは次のとおりです。

試験問題(記述式事例問題2題・小問計5問)について「筆記試験室」において解答用紙に解答する時間(20分を想定。問題の長さによって毎回変わりうる)を先に与え、「口頭試問室」においてその問題に関する技能検定委員との質疑応答を行い、

(1) 業務上の課題の 発見

(2) 解決策とその理由付

(3) 説得力

の観点から総合的な知的財産管理(特許専門業務/コンテンツ専門業務/ブランド専門業務)に関する技能の評価を行う。

引用元:http://www.kentei-info-ip-edu.org/exam_12jitugi

過去問によると、各小問には3つの文章(1)~(3)が含まれており、それぞれの文章に内在する課題(問題点)があるかないかと、その理由が問われています。

つまり、合計で15の文章に対して、課題のある/なしとその理由を答えることになります。

知財検定の受験資格

各級には受験資格が規定されていますので、条件を満たしているかを事前に確認しておきましょう。

3級の受験資格

  • 知的財産に関する業務に従事している者または従事しようとしている者

  → 実質的には誰でも受験可能と解釈できます。

  • 3級技能検定の一部合格者(学科または実技いずれか一方の試験のみの合格者)

  → 合格した方の試験は翌々年度まで免除されます。

2級の受験資格

  • 知的財産に関する業務について2年以上の実務経験を有する者

 → 実務経験は自己申告制ですが、虚偽の申告があった場合には合格が取り消されることがあります。

  • 3級技能検定の合格者

  → 他の条件を満たさない方は、3級から受験することになります。

  • 学校教育法による大学又は大学院において検定職種に関する科目について10単位以上を修得した者

  →「検定職種に関する科目」の詳細は公式サイトからご確認ください。

  • ビジネス著作権検定上級の合格者
  • 2級技能検定の一部合格者(学科または実技いずれか一方の試験のみの合格者)

  → 合格した方の試験は翌々年度まで免除されます。

1級の受験資格

学科試験の受験資格

  • 知的財産に関する業務について4年以上の実務経験を有する者
  • 2級技能検定の合格者で、知的財産に関する業務について1年以上の実務経験を有する者

  → 実務経験は自己申告制です。

  • 3級技能検定の合格者で、知的財産に関する業務について2年以上の実務経験を有する者
  • 学校教育法による大学又は大学院において検定職種(1級)に関する科目について10単位以上を修得した者で、知的財産に関する業務について1年以上の実務経験を有する者
  • ビジネス著作権検定上級の合格者で、知的財産に関する業務について1年以上の実務経験を有する者

実技試験の受験資格

実技試験には1級学科試験に合格すると受験することができます。

なお、1級の別区分にすでに合格している場合には学科試験が免除され、実技試験を受験可能です。

例えば、1級(特許専門業務)の合格者は 1級(コンテンツ専門業務)を受験する際に学科試験が免除されます。

知財検定の日程

知財検定は年3回(3、7、11月)実施されます。

ただし、毎回、すべての級が実施されるわけではありません。

過去の実績では2、3級は年3回の実施ですが、1級の各区分は年1回のみ実施されます。

知財検定の受験料

知財検定各級の受験料は次のとおりです。

3級学科試験5,500円
実技試験5,500円
2級学科試験7,500円
実技試験7,500円
1級学科試験8,900円
実技試験23,000円

知財検定に合格するメリット

メリットとデメリット

知財検定に合格すれば様々なメリットが得ることができます。

報奨金、昇進

会社によっては知財検定合格者に報奨金が支払われたり、昇進の条件になっていたりします。

会社勤めの方は社内規定を確認しておきましょう。

就職・転職に有利

知財職に就職・転職する場合に資格保有が有利に働くことがあります。

何級から効果があるのかは、あなたの経歴や応募先のポジションにもよります。

例えば、未経験可の求人なら3級でも履歴書に書いた方がよいですが、実務歴10年ほどの中堅クラスなら1級でないと効果は見込めないでしょう。

試験問題の性質から言って知財検定は特許事務所への転職よりも知財部への転職に有効です。

名刺に資格を書ける

合格者は「知的財産管理技能士」を名乗ることができます。

名刺に資格を書けば対外的なアピールとなり、取引先などから一定の信頼が得られます。

知財検定1級と弁理士の比較

知財検定1級と弁理士の違い

知財検定1級と弁理士は、難易度が近い知財系資格としてよく比較されます。

どちらを取得しようか迷っている方もいるでしょう。

両者の違いを以下にまとめます。

知財検定1級 弁理士
試験方式学科試験、実務試験(筆記+口頭)短答式試験、論文式試験、口述式試験
試験範囲法律、知財管理、権利活用など法律、技術(選択科目による)
合格率10%前後10%前後
独占業務なし弁理士業務(知的財産権に関する代理業務)

補足説明しますと、知財検定1級では知財法だけでなく、知財部などでの実務に即した内容も出題されます。

具体的な内容は試験区分(特許専門業務、コンテンツ専門業務、ブランド専門業務)によって異なってきます。

一方、弁理士試験の試験範囲は基本的に法律のみですが、試験区分がないため、特許法、実用新案法、意匠法、商標法など全てが試験範囲です。

弁理士試験には選択科目があり、技術系の科目を選択すればその勉強も必要です。

どちらの資格の合格率も年によって変動があるものの、10%前後で推移しています。

各試験で試験内容、受験者層が異なるため、難易度を単純に比較できませんが、大雑把には同程度の難易度と考えてよいでしょう。

その他に重要なのは独占業務の有無です。

独占業務とは法律で資格保持者のみに許可されている業務のことです。

知財検定1級には独占業務はありませんが、弁理士には弁理士業務があります。

弁理士業務とは、クライアントから依頼に応じて知財に関する手続きを代理する業務です。

特許事務所での業務は弁理士業務のですので、所員は少なくとも将来的に弁理士資格を取得すべきと考えてください。

逆にメーカーの知財部での業務は弁理士業務に該当しないため、知財部員は弁理士資格を取得しなくても問題ありません。

以上が知財検定1級と弁理士の違いですが、弁理士についてもっと知りたい方はまずは下記の記事をどうぞ。

知財検定1級と弁理士のどちらを取得すべき?

知財検定1級と弁理士の違いを踏まえると、おすすめは以下のようになります。

  • 知財部員、知財部志望 → 知財検定1級がおすすめ
  • 特許事務所の所員、特許事務所志望 → 弁理士がおすすめ

あくまでもおすすめですので、取得したい資格がすでに決まっている方はそちらを優先してください。

知財検定の勉強法

試験勉強している人

最後に知財検定の勉強法を級ごとに説明します。

3、2級の勉強法

3、2級については、公式テキストが出版されていますので、これらを使った勉強が中心でよいでしょう。


知的財産管理技能検定3級公式テキスト[改訂12版]

知的財産管理技能検定2級公式テキスト[改訂11版]

なお、公式サイトで過去問が公開されています(ただし、公開されているセット数は少なく、解説はありません)。

予備校で教わりたい方はLECTACSTUDYingの講座を利用しましょう。

1級の勉強法

3、2級とは異なり、1級の公式テキストは出版されていません。

民間の出版社が出しているテキストをAmazonでいくつか見かけますが、質が不明なものが多く、あまりおすすめできません。

市販のテキストの中では、合格実績がはっきり示されている、知財経営研究社の知財検定1級 合格マニュアルがよいでしょう。

なお、1級の過去問も公式サイトで公開されています(ただし、公開されているセット数は少なく、解説はありません)。

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