この記事は、知財部に勤務する弁理士が書いています。
企業の知財部に入りたい方や、知財部に入ったばかりの方。
知財部での出世・キャリアパスについてどこまで知っていますか?
よく知らないという方はこの記事をぜひ読んでく下さい。
この記事を読むことで次の3つのことが分かります。
- 出世しやすい企業の知財部が分かる
- 出世するためのポイントが分かる
- 出世が望めない場合の対策を立てられる
- 最初に注意事項ですが、会社の組織編成などによって出世の事情は大きく異なります。
この記事ではあくまでも典型例を解説していることをご了承ください。、
知財部の出世の最高到達点は?
まずは目標のポジションを知っておく必要があります。
知財部で出世を重ねた場合にどこまで到達できるのかを説明します。
役員
知財部出身者が大きく出世できる会社では、役員が最高到達点と考えられます。
問題は知財部から役員になれる会社なのかどうかです。
将来の人事次第なので明確には分かりませんが、現職の役員に知財出身者がいるかがひとつの目安でしょう。
一定規模の会社では、役員のプロフィールがウェブサイトに公開されている場合が多いので、目的の会社があれば調べてみてください。
知財部部長
役員になるのが現実的でない場合、知財部部長が最高到達点です。
ただし、法務部の下に知財課が設けられている会社では知財課長、場合によっては法務部長です。
どの会社でも部門長は設けられているはずですので、部課の違いはあるにせよ部門長を目指すことはできます。
知財部で出世するためのポイント
続いて知財部で出世するための2つのポイントを説明します。
ただ「知財部で」というよりは会社内で出世するためのポイントと言った方も適切かもしれません。
知財部だから何か特別な心構えが必要なわけではないからです。
2つのポイントを端的に言うと環境と実力です。
環境=出世できる会社の選択
環境と実力のうち、あえてどちらかを選ぶとすれば環境です。
環境がなければ話が始まりません。
環境とは、自分が出世できる可能性のある環境を指します。
より具体的には
- 年功序列・実力主義のどちらの色が強いか
- 知財部員の年齢・キャリアの分布
の2点です。
例えば、年功序列の傾向がある会社では、自分よりも年齢・キャリアが上の部員、下の部員の割合に出世が大きく左右されます。
自分に実力があっても上がつかえていれば大きな出世は望みにくいからです。
逆に実力主義の会社であれば部員の構成にはそれほど影響されずに済みます。
この場合でも実力主義という環境を選び取る必要がありますので、その意味でも環境が重要と言えます。
もし就職・転職活動中の方は、環境に関する質問を面接でしてみてください。
募集要項を見ても詳細な環境は分かりませんので、直接質問して情報を集めることが大切です。
実力=マネジメント能力が最重要
2つ目は実力ですが、実力にも様々な種類があります。
- 有効な知財を創る能力
- 知財を活用する能力
- コミュニケーション能力
- 部下・後輩を指導する能力
など全て実力です。
ただし、出世をするために広く、深い実力が必要かと言えばそうでもありません。
最重要なのはマネジメント能力であり、マネジメントができるならその他の実力はそこそこでよいです。
あらゆる業務を自ら行う必要はなく、できる人に割り振ればよいからです。
むしろ人にうまく任せなければ時間がいくらあっても足りません。
適切に仕事を割り振るためには、部員の得意な仕事や手持ちの仕事量などの事情を把握し、判断しなければなりません。
つまり、人を管理するマネジメント能力が物を言います。
リーダーとして知財部が進むべき方向を示して舵取りしたり、部内での問題(多くが人間関係)が生じた場合に解決を図ったりするのもマネジメントです。
知財に関する知識、個別案件を担当する能力が特別優れていなくても、マネジメントができれば出世できる可能性はあります。
逆に個別案件を上手く進める人でもマネジメントができなければ出世は難しいでしょう。
出世が止まった人のキャリアパスは?
出世する努力を重ねても、残念ながら思い通りにいくとは限りません。
リスクを知っておく意味で、出世が止まった人にどのようなキャリアパスが用意されているのかを説明します。
もしかすると、出世街道よりも進みたい道がこの中から見つかるかもしれません。
係長・課長クラス
係長・課長など役職名は会社によりますが、所属長未満の役職で出世が止まるパターンです。
上の役職に行くにつれてポストは少なくなりますので、途中で出世できなくなる人が出てくるのは自然なことです。
典型的には少グループのリーダーという位置付けで、グループメンバー(部下)を管理します。
自分の担当案件をこなしながら管理指導を行う場合もありますし、マネジメントに専念する場合もあります。
個別案件のエキスパート
管理業務をしない、個別案件に特化したエキスパートの道に進む人もいます。
エキスパートと一括りにしていますが、実際にはピンからキリまでです。
例えば、特定の個別案件に強い職人タイプの人がエキスパートになるのはポジティブなパターンです。
このような人は管理職には向かない傾向にあり、本人自身も出世を希望しないことが多いです。
逆にネガティブなパターンもあり、万年平社員タイプの人です。
万年平社員になってしまう原因は、周りと比べて明らかに実力不足であること、勤務態度が悪いこと、人間的な問題を抱えていることなどが考えられます。
ただし、実際には万年平社員になる人はあまりいませんので、心配しなくても大丈夫です。
会社としても、コストをかけて雇った社員を万年平社員化してモチベーションを下げるのは損と考えるからです。
他部署への異動
知財部よりも適正がある他部署に異動する人もいます。
自ら志願して異動することもありますし、強制的な異動もあり得ます。
異動先になりやすいのは法務部・人事部・総務部などの間接部署ですが、技術的なスキルがある人なら技術系部署に異動になる可能性もあります。
知財部以外で成功するには?
ここまで読んで「知財部で出世したいけれど、難しそう」と思った方はいませんか?
そんな方は、知財部だけにこだわらずに他のキャリアパスも検討してみてください。
特許事務所に勤務
知財業界の勤務先と言えば、知財部と並んで特許事務所が有力です。
特許事務所は成果主義を採用している場合が多く、実力次第で知財部よりも年収を伸ばしやすいのが大きな特徴です。
「出世したい」のではなく「高収入を得たい」という人なら、特許事務所の方が向いているかもしれません。
なお、特許事務所での出世とは、クライアントの主担当になること、共同経営者(パートナー)になること、そして所長になることです。
経営層に回ると所員に対して大きな責任を負うことになりますが、その分、リターンも大きくなります。
特許事務所に興味がある方は下記の記事もどうぞ。
独立開業
特許事務所を設立して独立するのもひとつの道です。
ただし、知財未経験者がすぐに独立するのは無理があります。
弁理士資格と業務経験が必須ですので、まずは特許事務所で修行しましょう。
独立開業は、成功すれば圧倒的な収入が得られるのがメリットです。
ただし、失敗したときの保証がないことに注意してください。
リスクを減らすには、継続して仕事を供給してくれるクライアントをあらかじめ確保しておく必要があります。
独立志望の方は、クライアントの信頼を得ることを意識して普段から仕事に取り組むのがよいでしょう。