【知財部員が教える】知財翻訳検定の勉強法は?実務未経験でも実践可能

知財翻訳検定の勉強法

※このページには広告が含まれます。

知的財産翻訳検定(知財翻訳検定)は、知財書類の翻訳能力を測る検定試験であり、付加価値を付けたい翻訳者などから注目を集めています。

ただ、知財はあまり一般的ではない分野ですので、

「実務未経験だけど、合格できる?」

「理系知識がないから不安」

といった声があるかと思います。

このページでは、知財翻訳の未経験者でも実践できる、知財翻訳検定の勉強法を紹介しています。

目次

知財翻訳検定の概要

勉強を始める前に知財翻訳検定の概要を確認しましょう。

すぐに勉強法を知りたいかたはこちらへ。

試験区分ごとの難易度・出題内容

知的財産翻訳検定の試験区分は、大きく1~3級、ドイツ語、中国語です。

3級から順に概要を説明していきます。

3級の難易度・出題内容

3級は「入門者・初心者レベル」の設定です。

文章の中の短い部分を翻訳する力が試されます。

合格すれば、簡単な翻訳文をチェックすることができるようになるでしょう。

しかし、専業の翻訳者として翻訳したり、特許明細書を丸々一本チェックしたりするには物足りず、2級以上を目指べきと思います。

1~3級には和文英訳(春試験)、英文和訳(秋試験)の2種類があります。

  • 和文英訳(春試験)

問題は、記述問題と選択問題の2つで構成されます。

記述問題では、200語弱の英文が示され、その一部の和訳が指示されます。

ジャンルは科学ですが、学術的にそれほど高度ではなく、難易度が高めの専門用語には訳語が指定されています(例:discharge-life time 放電寿命)。

選択問題には次の4タイプの問題が含まれます。

英文(1文)についてA~Cから適切な和訳文を選択する問題 10問
英文(1文)についてA~Cから間違った和訳文を選択する問題 10問
和文(1文)についてA~Cから適切な英訳文を選択する問題 10問
和文(1文)についてA~Cから間違った英訳文を選択する問題 10問

翻訳の対象になるのは、特許明細書に記載されるような技術的な文や、知財法に関する法律的な文です。

  • 英文和訳(秋試験)

秋試験でも、問題構成は記述問題と選択問題です。

記述問題では、短めの英文の一部が日本語になっており、その部分を和訳します。

選択問題は春試験と同じ形式・設問数です。

2級の難易度・出題内容

2級は「特許明細書翻訳の基本を理解し実務に堪える力があると認められるレベル」とされています。

2級に合格すれば、標準レベルの特許明細書を自力で翻訳できるようになるでしょう。

  • 和文英訳(春試験)

日本語明細書の一部、特許請求の範囲を和訳する問題が3題出されます。

2級までは技術分野の区分はなく、機械・化学など様々な分野の問題に解答しなければなりません。

専門外の分野に対応するのは大変そうに見えますが、その分、専門知識が必要ないレベルに設定されていますので、心配ありません。

気を付けるべきなのは、特許請求の範囲(クレーム)の翻訳です。

記載方法が独特な上に、実務的にも厳密な記載が求められる部分だからです。

  • 英文和訳(秋試験)

秋試験は、春試験と問題構成は同じで、ちょうど和文と英文が入れ替わったイメージです。

1級(知財法務実務/機械工学/電気・電子工学/化学/バイオ)の難易度・出題内容

1級は「知的財産分野における専門職業翻訳者として推薦できるレベル」です。

分野の区分があるのが2級以下とは大きく異なり、それぞれの区分の試験で高度な専門用語を含む文章が出題されます。

1級に合格すれば、その分野でほとんどの案件に対応できる翻訳力が身に付くでしょう。

  • 和文英訳(春試験)

長めの日本語明細書、知財法に関する文章など2~4題についてその一部を英訳します。

2級に比べて内容が高度であり、英語だけでなくその分野の基礎知識を持っていないと難しいレベルです。

  • 英文和訳(秋試験)

春試験と英訳と和訳が入れ替わりますが、問題構成は同様です。

  • 面接

1級では筆記試験に加えて面接試験が課されます。

面接の内容は公式には発表されていませんが、受験者からの情報によると本人確認する程度とのことです。

中国語・ドイツ語

中国語・ドイツ語は、レベルは2級と同じく「特許明細書翻訳の基本を理解し実務に堪える力があると認められるレベル」です。

中国語では中国語明細書の一部、特許請求の範囲を和訳する問題が3題出題され、ドイツ語ではドイツ語明細書の一部、特許請求の範囲を和訳する問題が3題出題されます。

どちらの試験も和文からの翻訳は出題されません。

試験日程・試験時間

区分試験日程試験時間
3級春(4~5月)・秋(10~11月)2時間
2級(和文英訳)春(4~5月)3時間
2級(英文和訳)秋(10~11月)3時間
1級(和文英訳)春(4~5月)3時間
1級(英文和訳)秋(10~11月)3時間
中国語秋(10~11月)3時間
ドイツ語秋(10~11月)3時間

受験料

3級5,000円
2級10,000円
1級15,000円
中国語10,000円
ドイツ語10,000円

なお、所定団体の会員などには割引が適用されます。

NIPTA(日本知的財産翻訳協会)正会員(個人・団体)
JTF(日本翻訳連盟)会員
大学生

20%割引
アメリア(翻訳者ネットワーク)会員           15%割引15%割引

知的財産翻訳検定の勉強法

ここからは未経験でもできる知的財産翻訳検定の勉強法を解説していきます。

過去問の研究

全ての過去問と参考解答例が、日本知的財産翻訳協会の公式サイトで公開されています。

セット数が豊富にありますので、過去問だけでも相当勉強になると思います。

しかし、中には過去問にいきなり取り組むのが困難な方もいるかもしれません。

考えられる2つの原因について対策を説明します。

  • 難しすぎて解答例を見ても理解できない

このケースでは基礎的な英語力又は科学知識が足りないと思われます。

英語力がない場合は単語・文法を含めた一般英語の習得を先に行ってください。

教材はTOEICのテキストがおすすめです。

TOEICの点数は就職や転職の場で評価されやすく、ここで行った勉強が後々役に立つ可能性があるからです。

一方、科学知識が足りない場合は学生向けのテキストで知識を蓄えましょう。

専門分野がない2~3級では中学理科のテキスト、1級では高校理科の専門科目のテキストがちょうどよいレベルと思います。

知識は多いに越したことはありませんが、これ以上勉強すると時間がかかり過ぎてしまいます。

ある程度の知識を身に付けた後は、翻訳の練習をしながら不足分を補っていけば十分です。

  • 自分の回答の良し悪しが分からない

確かに翻訳に絶対の正解はないので、自己採点が難しいのは分かります。

実際、公式サイトでは参考解答訳について以下のように書いています。

「参考解答訳」は作問にあたった試験委員が中心になって作成したものです。模範解答という意味ではなく、あくまでも参考用に提示するものです。

ただ、模範ではないと言っても、複数人の意見が反映された最大公約数的な回答という意味で十分基準にしてよいでしょう。

参考解答と比べて、明らかな誤訳や訳抜けは減点対象と考え、改善するようにしましょう。

一方、意味内容が同じで単に表現の違いであれば修正する必要はないと思います。

それでも判断が付かない場合は、参考解答訳に寄せて訳せるようにするのが無難でしょう。

下記に試験講評も出されていますので、採点する上で参考にしてみてください。

https://www.nipta.org/ExamResult_33-1_J.html

※URLの数字を変えると、過去の講評も閲覧可能です。

特許明細書での勉強

過去問の他に、生の教材として実際の特許明細書を使った勉強も有効です。

日本語の特許明細書の入手

まず、特許文献を検索できるJ-PlatPatというサイトを開き、日本語の特許明細書をダウンロードします。

簡単な探し方としてキーワードで指定する方法があります。

検索項目で「全文」や「特許請求の範囲」を選択し、探したい技術を示すキーワードを入力してください。

ヒット数が多すぎる場合は複数のキーワードを入力するとよいです。

キーワードで探す以外には出願人を指定する方法もあります。

検索項目「出願人/権利者」を選択し、出願人(企業名)を入力してください。

出願人の選定基準は、

  • 目的の技術分野で特許出願していると考えられること
  • 大企業であること(出願の質がある程度保証されているから)
  • アメリカに市場があること(日本にしか市場がないと、英文明細書が存在しないため)

の3つです。

出願人が分からない方は下記の表に例を挙げていますので、参考にどうぞ。

機械工学トヨタ自動車株式会社 
キヤノン株式会社
株式会社クボタ
電気・電子工学パナソニックIPマネジメント株式会社
三菱電機株式会社
株式会社東芝
化学住友化学株式会社
花王株式会社
エルジー・ケム・リミテッド
バイオ協和発酵バイオ株式会社
株式会社三菱ケミカルホールディングス
タカラバイオ株式会社

英語明細書の入手

次に、見つけた日本語明細書に対応する英語明細書を探します。

世界の特許文献を入手できるGoogle Patentsというサイトを開き、取得済みの日本語明細書の番号(出願番号、公開・公表番号、又は特許番号)を入力してください。

例えば、JP2022111111、JP6111111のような形式になるはずです。

検索結果が表示されたら右欄の「Worldwide applications」に注目してください。

ここにJP、US、CNといった出願国が並んでいると思いますが、その中にUSがあれば「当たり」です。

USをクリックすると米国出願のページに切り替わりますので、英文明細書をダウンロードしてください。

一方、USがない場合はアメリカへの出願がないということを意味します。

残念ですが、J-PlatPatに戻って別の日本語明細書を検索し直してください。

なお、US以外の国で英語明細書が存在する場合もありますが(例えばEP(ヨーロッパ))、EP明細書の利用はおすすめしません。

知財翻訳検定では米国出願を想定した問題が出されているからです。

明細書を使った演習

以上により、日本語明細書と、対応する英語明細書が入手できたと思います。

片方を問題、もう片方を解答例に見立てて演習に利用してください。

この場合の解答例も完璧ではなく、部分的な間違いが含まれているかもしれません。

しかし、出願人のチェックを経て特許庁に提出されている書類ですので、大部分の箇所は正しいものとして考えてよいでしょう。

知財翻訳検定以外の知財系資格

知財翻訳検定以外にも様々な知財系資格が知られています。

他の翻訳者との差別化のために取得を検討してもよいかもしれません。

翻訳者の方には特に知財検定がおすすめです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次
閉じる