弁理士業界では40代での転職はそれほど珍しくありません。
知財に関する知識・スキルは潰しの効く部分が大きく、40代で転職を成功させている方は大勢います。
ただし、年齢が上がるにつれて転職しにくくなるのは他業界と同じで、ポイントを押さえて転職活動することが重要です。
この記事では、40代弁理士が転職するためのポイントを紹介します。
実務未経験の方でも実践可能ですので、ご安心ください。
40代弁理士の転職の難易度は?

まずは転職の現状を知る意味で、40代弁理士の転職の難易度について説明します。
実務経験の有無で差が付く
転職する際に最重要なのはやはり実務経験です。
例えば30歳から知財の仕事に就いた場合、40代で10年以上のキャリアになります。
40代になると、経験者と未経験者の差に大きな差が出てしまうことは否めません。
経験者の場合、経験が活かせる職場を選べば転職は難しくはないでしょう。
具体的には特許事務所から特許事務所の転職、知財部から知財部への転職は比較的容易です。
一方、未経験者の場合は有資格者であってもそれほど易しくはないのが現実です。
次の項目で説明するポイントを押さえて効果的に転職活動を進めてください。
難易度は知財部>特許事務所>特許調査機関
弁理士の主な転職先は特許事務所、メーカーの知財部の2つです。
2つの中で転職難易度が高いのは知財部です。
その大きな理由として知財部で40代社員を雇うコストが考えられます。
多くの日本メーカーは多少なりとも年功序列の面があるため、40代社員の給与水準はそれなりに高く設定されています。
メーカーはそのコストを考え、40代の採用に慎重になる傾向にあります。
一方で特許事務所の給料体系はメーカーとは異なり歩合給であることが多いです。
特許事務所は、所員の年齢に関係なく、彼らの売り上げに応じて給与を支払えばよいので、リスクは小さくなります。
知財部への転職しか考えていない方であっても、特許事務所に目を向けてみてもよいかもしれません。
なお、特許事務所と知財部は様々な点で異なりますが、大きな違いは業務内容です。
特許事務所ではクライアントの特許出願などを代理する弁理士業務(代理業務)を行い、知財部では、自社の出願、知財管理、知財活用などを行います。
両者の違いは下記の記事で詳しく説明しています。



特許事務所よりもさらに難易度が低いのが、ややマイナーですが特許調査機関です。
特許調査機関は特許庁やメーカーなどから特許調査を請け負う機関です。
特許調査機関の求人には、実務経験や年齢制限のないものも見られ、エンジニア出身者なども活躍しています。
知財職に就くことにこだわりたい方にとって特許調査機関は一考の余地があると思います。
社内知財部への異動も検討する
転職ではありませんが、メーカーの研究職などに就いている方は自社の知財部への異動も検討してみてください。
他社の知財部に転職するよりも業務面・待遇面のギャップが少なく、労力もかかりません。
今すぐの異動が無理だとしても急に知財部に欠員が出ることもあり得ます。
異動の可能性を視野に入つつ、転職活動を進める方針も有効と思います。
40代弁理士の転職のポイント5選



ここからが本題です。
未経験でも実践できる、40代弁理士の転職のポイントを説明していきます。
複数ルートで求人を探す
40代弁理士にとって時間が何よりも大切です。
できるだけ早く転職先でスタートを切れるように転職活動の効率にはこだわりましょう。
そのために、様々なルートを利用して求人を探すのがよいです。
具体的に3つのルートを紹介します。
パテントサロンの求人スクエア
求人スクエアは知財の公開求人が集まる掲示板として最も有名です。
それほど求人数は多くありませんが、登録不要で気軽に求人を閲覧し、応募できます。
どのような求人があるのか覗いてみるだけでも参考になると思います。
Googleマップ → 特許事務所ホームページ
主に特許事務所志望の方に有効な探し方です。
まず、Googleマップで希望の勤務地付近を表示させます。
勤務地にこだわりがないのなら、大都市(東京、大阪など)の主要な駅近辺がおすすめです。
マップ上で「特許事務所」または「特許業務法人」を検索し、見つかった特許事務所名を記録します。
見つからない場合は、マップを縮小して表示範囲を広げてください。
次に特許事務所のホームページを検索し、その中に採用ページがないかをチェックします。
人材募集中の事務所であればほぼ間違いなく、採用ページがあるはずです。
このようにホームページからアクセスすることで、転職サイトなどに掲載されていない求人も見つかります。
ただし、ひとつずつ見ていくのに時間がかかってしまうというデメリットはあります。
転職エージェント
求人を効率的に探すために転職エージェントはぜひ利用したいところです。
特に40代の場合、自身の経歴に合った求人を選別する作業は非常に骨が折れます。
転職エージェントに依頼することで、あなたにマッチする求人を独自のデータベースからピックアップしてもらえます。
他にも転職エージェントなら
- 非公開求人に応募できる
- エージェントからアドバイスがもらえる
- スケジュールを調整してもらえる
- 訊きにくい質問を代行してもらえる
といったメリットを享受できます。
転職エージェントの詳細については下記の記事をどうぞ。



自身のアピールポイントを探す
転職活動でのアピールポイントと言えば、弁理士資格、研究開発経験、語学力などに目が行くと思いますが、それら以外にも使えるものがないかを検討してみましょう。
自分では当たり前に思っている業務や趣味の中にお宝が見つかるかもしれません。
使えそうな例をいくつか挙げてみますので、参考にしてみてください。
- 業務手順書などの文章作成の機会が多い
- 自作パソコン、DIYの経験がある
- 科学雑誌を購読している



待遇面を譲歩する
特に実務未経験の場合ですが、転職後に年収などの待遇が現職よりも悪くなるケースがしばしばあります。
それは、転職先で利益に貢献できるようになるまで時間を要するためです。
また、経験者であっても知財部から特許事務所に転職した場合、初めのうちは思うような収入を得られないかもしれません。
初年度の待遇が悪くなっても耐え、今後伸ばしていく覚悟を持てば、それだけエントリーできる求人の幅が広がります。
ダメ元でエントリーする
「どうしても応募したいが、条件を満たしていない」
そんな迷いがあるときにはダメ元でエントリーしてみましょう。
その条件が必須条件ではない可能性もありますし、別のアピールポイントで挽回できるかもしれません。
門前払いされたとしても今後会うことのない相手ですから、気にする必要はありません。
ひとつ留意しておきたいのは「条件を満たさないと承知しているが、応募させていただいた」とエントリーシートで断っておくことです。
募集要項を読めていない読解力のない応募者と誤解されないようにするためです。
弁理士同士の繋がりを利用する
弁理士会派や委員会などでコネを作っておくと、転職に役立つ可能性があります。
過度な期待は禁物ですが、採用担当に口をきいてもらえたり、面接の誘いがあったりといった話を聞いたことがあります。
たとえ転職に繋がらなかったとしても、他の弁理士と交流して刺激を受けることは弁理士としてやっていく上でプラスになります。